きこえと補聴器

聴こえの仕組み図

聴こえの仕組み図

一般に”音”というものは、物の響きや人や鳥獣の声、物体の振動が空気などの振動として伝るものをいいます。

その空気の振動は集音器である耳介を通って、耳穴に入り、奥にある鼓膜で受けられ、耳小骨で増幅されます。
そして蝸牛の中で振動は電気信号に変換され、どんな高さ(周波数)かどんな強さか分析し分類され、聴神経に運ばれ、最後に脳が記憶を照合しそれが何の音かを判断します。

最終的に”音”を聞いているのは、”脳”です。耳には絶えずいろんな音が押し寄せます。それでもうるさく感じないのは、脳が必要な音だけを選り分け、他をカットしているからです。

●難聴の程度

聴覚障害の程度は、何とか聴こえる程度の音の大きさを測定しdB(HL)の単位で表します。音の大きさが大きいほど高い値を示し、これにより健康な場合に対しどれだけ聞こえが悪くなったか(大きな音でないと聞こえないか)が示されます。

大まかな聴覚障害の程度は以下の通りです。

聴力30〜40dB:普通の会話には不自由しないが、ささやき声は聞き取りにくい。
聴力40〜50dB:会議場での聞き取りは困難。1対1の会話では不自由しないが、聞き違いがあります。
聴力50〜70dB:会議場での聞き取りは不自由。1m位の距離で大声なら聞き取れます。
聴力70〜80dB:50cm以上離れると、会話が困難です。
聴力80〜90dB:耳にくっつくように話さなければ、会話の聞き取りができません。
聴力90〜100dB:耳にくっつくようにして、大声で話す必要があります。
聴力100dB以上:会話がまったく聞き取れません。

●身体障害者等級

平均聴力が規定以上になると身体障害者に認定されます。これは病気等による難聴に限らず、老人性難聴でも対象になります。

下記がその基準です。

2級
両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの(両耳全ろう)
3級
両耳の聴力レベルが90dB以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級
  1. 両耳の聴力レベルが80dB以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
  2. 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの
6級
  1. 両耳の聴力レベルが70dB以上のもの(40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
  2. 一側耳の聴力レベルが90dB以上、他耳の聴力レベルが50dB以上のもの

補聴器の装用経験がなく、初めて補聴器をご検討される場合は、出来れば一度耳鼻咽喉科を受診しておくことをお薦めいたします。
特に下記のような症状がある場合は必ず受診してください

● 中耳炎などで過去90日以内に耳漏があった
● 過去90日以内に突発性または進行性の聴力低下があった
● 過去90日以内に左右どちらかの耳に聴力低下があった
● 急性または慢性のめまいがある
● 耳あかが多い
● 外耳道に湿疹、傷みまたは不快感がある

その他でも、補聴器店での相談中に受診を薦められることがあります。そのときは必ず補聴器を装用する前に受診するようにして下さい。

その結果、補聴器を装用してもいい状態になったら、聴力検査結果をもらって補聴器店に持っていって相談してください。

補聴器が必要か不要かは専門家の間でも意見が分かれるところです。聴こえに不自由があって補聴器を使ってもいい状態であれば、補聴器店で相談してみてください。
店頭での相談と試聴はほとんどの場合無料で行えます。

決めるのはあなたです

決めるのはあなたです

補聴器をつけるかつけないか、どんな補聴器を使うか、決めるのは耳鼻咽喉科医でも補聴器技能者でもなく、利用者様ご本人です。
各専門家の意見を聞きながらご自身でご判断頂けるよう、お願い申し上げます。
「補聴器店の選び方」では、そのための信用できる補聴器店探しをお手伝い致します。

補聴器は、つけたからといって完全に聴力がもどるものではありません。あくまでも残っている聴こえを補う機器なので限界があります。だからこそ残っている聴力を生かすのに適した機種を選び、一人ひとりの聴力に合わせて適正に調整される必要があります。その上で、道具としての限界を理解して上手くお使い頂ければ、と思っています。
ここでは、難聴の種類とそれぞれについて補聴器の効果をご説明します。

耳の機能は大まかに、音を物理的に神経に伝える部分と、その音を拾って電気信号に変換し脳に送る部分に分かれます。難聴の原因となる障害がどこにあるかによって難聴の種類が異なります。
・音を電気信号として脳に送る部分に障害がある場合→感音性難聴
・音を神経に伝える部分に障害がある場合→伝音性難聴
・感音部、伝音部の両方に障害がある場合→混合性難聴

難聴の種類

難聴の種類

●感音性難聴
騒音性難聴や老人性難聴はこれにあたります。
音を電気信号に変換して送る部分が傷んでいるため、小さな音が聞きづらいだけでなく音がゆがんでしまっていたり音の聞き分けが困難になってしまっています。そのため、補聴器をつけてもゆがんだ部分や聞き分けの困難さは残り、

・早口の会話
・複数人の会話
・口の中で話すようなはっきりしない発音

・騒音下の会話

等は聞き取りづらくなります。
程度は個人差があり、データ上は同じ聴力でも言葉の聞き取りはそれぞれ異なります。
ただ、会話の中での聞き取りは、聞き取りにくい言葉があっても前後関係等からの推測も働くため、
・ゆっくり
・はっきり
・正面から

話をすれば、補聴器装用により会話がしやすくなることが多いです。

●伝音性難聴
鼓膜から、音を変換する内耳に至る経路の部分に障害があり、音が上手く伝わらない状態です。
神経は正常に機能していますので、大きい音を入れればよく聞こえます。障害のある部分を介さずに骨を通して音を伝える骨導補聴器も効果的です。
補聴器の効果はかなり期待出来ますが、手術や治療によっても回復の可能性がある場合があります。

●混合性難聴
感音性難聴と伝音性難聴の両方の要素が合わさった難聴です。

●身体障害者自立支援法

難聴の程度が規定以上になると身体障害者に認定されます。これは病気等による難聴に限らず、老人性難聴でも対象になります。
難聴のみでの認定では、程度によって6級、4級、3級、2級に認定されます。この障害者認定を受けていれば、5年に一度、補聴器の購入時に補助が出ます。 金額は判定を受けた補聴器の種類によって異なり、基本的に基準額の9割が受けられます。(生活保護を受けられている場合は10割)
基準額を下表に示します。

表:機種別基準額

高度難聴用

重度難聴用
箱形
35,226円
57,474円

耳掛形

45,217円
69,319円
耳穴形
141,110円
-

基準額よりも高価な補聴器を購入する場合、差額は自己負担となりますが、基準額よりも高価な補聴器の購入を認めていない自治体もあります。(その場合、全額自己負担となります。)事前に確認しておくことをお薦め致します。

購入時の補助は5年に1度ですが、その間の修理は何度でも補助を受けられます。購入時と同じく、修理金額の9割(生活保護を受けられている場合は10割)の補助が受けられます。

身体障害者に認定されるには、役所にて申請し、病院で診断を受ける必要があります。
詳しくはお住まいの市区町村の障害者福祉担当窓口でご相談下さい。

●労災、戦災

労災、戦災で聴力の障害を認定されている方は、5年に1度、無償で補聴器を支給されます。(金額の上限は前述の基準額と同じです。)

●医療費控除

医療費控除の対象となる医療費は、医師等による診療、治療、施術等を受けるために直接必要な費用に限られます。

(所得税法基本通達73-3・医師による治療を必要とする症状を有することが必要 であり、かつ、医師の治療が現に行われていることが必要です。)

ですから、治療とは関係なく、難聴不便なので補聴器を購入した場合のように、日常生活の用を足すための費用というのは、医療費控除の対象になる医療費にはなりません。

難聴以外の症状を治療するために、医師の声が聞こえづらく治療に支障が出るため補聴器を着けるように指示された場合などは対象となる可能性があります。

医師等の診療を受けるために直接必要でない補聴器は、医療費控除の対象に

はなりません。

逆に、医師等の治療に直接必要であることが証明されるならば、医療費控除の

対象となります。

(解説)

医療費控除の対象になる医療費は、医師等による診療、治療、施術等を受けるた

めに直接必要な治療に限られます。

(所得税法基本通達73-3・医師による治療を必要とする症状を有することが必要

であり、かつ、医師の治療が現に行われていることが必要です。)

ですから、治療とは関係なく、単に難聴であるというだけで補聴器を購入した場

合のように、日常生活の用を足すための費用というのは、医療費控除の対象にな

る医療費にはなりません。

●両耳装用の効果

補聴器を購入する際の検討事項として、どちらの耳に着けるか、両方につけるか、という点があります。

一般的には両耳に着けて両耳を活用した方が、音の方向や距離を判別しやすくなり、聴き取りも良くなります。

もちろん、左右の聴力差が大きい場合など効果が得られない事もありますし、片方でも十分な効果が得られる場合もありますので、補聴器技能者とよくご相談の上でご検討下さい。

●両耳装用の効果
一般的に以下のような効果があると言われています。

・騒音の中での会話が聴き取りやすくなる
・音の方向や位置がつかみやすい
・比較的小さい音量でも聞き取れるので疲れにくく、ハウリングも起こりにくい

●片耳装用の場合
片耳装用の場合、基本的には比較的言葉の聴き取りの良い方の耳に装用します。その方が効果が得られやすいためです。
ただし、片耳が健聴に近い等の場合は悪い方に装用することもあります。

●ダイナミックレンジとは

聞き取れる最も小さい音の大きさを「最小可聴閾値」と呼びます。これより小さい音は聞こえません。
また、快適に聞き取れる最も大きい音の大きさを「最大快聴閾値」と呼びます。これより大きい音はうるさく感じます。

それぞれ個人差があり、最小可聴閾値〜最大快聴閾値をダイナミックレンジと呼びます。

●感音難聴のダイナミックレンジ

難聴になると最小可聴閾値が上昇しますが、感音難聴の特徴として最大快聴閾値が下降することがあります。
つまり、大きい音でないと聞こえないが、健聴者にとってはそれほどうるさくない程度の音でもうるさく感じる、ということになり、ダイナミックレンジはかなり狭くなります。

そのため、感音難聴・混合難聴の方に補聴器を合わせる場合、小さい音は大きく増幅し、大きめの音はあまり増幅しないように、極端に大きい音は逆に小さくなるようにすることが望ましいです。
このような増幅方式をワイドダイナミックレンジコンプレッションと呼び、デジタル補聴器(一部の安価な補聴器を除く)で可能です。
アナログ補聴器でもごくわずかですが可能な機種もあります。
これが不可能な補聴器は使えないという訳ではなく、出力制限で対応します。(出力制限の機能は必須です。)

コンプレッションについては「リニア/ノンリニア増幅」をご参照下さい。

ダイナミックレンジ

ダイナミックレンジ