補聴器関連

マスキングノイズの種類と適性の考察 2026/08/09

認定補聴器技能者試験の過去問解説として、今回は「マスキングノイズの種類と各測定への適性」を取り上げます。試験対策はもちろん、日頃のフィッティング・測定業務における理論的背景の再確認にもお役立てください。

純音聴力測定と「狭帯域ノイズ」

純音聴力測定において、マスキングに適しているのは狭帯域ノイズ(Narrow Band Noise)です。オージオメータでは「バンドノイズ」と表記されることもあります。

純音聴力測定では、特定の周波数における聴覚閾値を測定します。そのため、測定音の周波数を含む限られた帯域にエネルギーを集中させた狭帯域ノイズを用いることで、効率よくマスキングすることができます。

マスキングが必要となるのは、測定耳に提示した音が頭蓋骨を介して反対側の耳に伝わり、反対耳で聴取される可能性があるためです。マスキングによって音の両耳間移行そのものを防ぐのではなく、測定していない側の耳にノイズを提示し、そこへ移行した測定音を聞き取れないようにすることで、測定耳本来の閾値を求めます。

ホワイトノイズのような広帯域雑音でもマスキング現象そのものは生じますが、純音をマスキングするためには、測定周波数付近にエネルギーを集中させた狭帯域ノイズの方が効率的です。オージオメータの狭帯域マスキングノイズは、測定周波数に対応した帯域が用いられます。

語音聴力測定と「スピーチノイズ」

語音聴力測定のマスキングには、スピーチノイズ(Speech Noise / Speech Weighted Noise)が適しています。

語音は単一周波数ではなく、広い周波数帯域にわたる複雑な成分を含んでいます。そのため、特定の狭い周波数帯だけをマスキングする狭帯域ノイズでは、語音全体を効率よくマスキングすることができません。

スピーチノイズは、語音の長時間平均スペクトルに近い周波数特性をもつ広帯域雑音で、語音を効率よくマスキングできるように設計されています。このため、語音聴力測定のマスキングにはスピーチノイズが用いられます。

参考:ホワイトノイズとピンクノイズ

ホワイトノイズは、周波数によらずほぼ一定のパワースペクトル密度をもつ広帯域雑音です。広い周波数成分を含むためマスキング作用はありますが、純音に対しては狭帯域ノイズ、語音に対してはスピーチノイズの方が、それぞれ効率的なマスキングノイズとなります。

ピンクノイズは、周波数の逆数に比例するパワースペクトル密度、いわゆる1/f特性をもつ雑音です。周波数が1オクターブ高くなるごとにパワースペクトル密度が低下するため、各オクターブ帯域に含まれるエネルギーはほぼ等しくなります。音響機器や室内音響の評価などに利用されますが、純音・語音聴力測定における標準的なマスキングノイズではありません。

試験対策では、単にノイズの名称を暗記するだけでなく、「測定する音の周波数特性に合わせて、効率よくマスキングできるノイズを選ぶ」という基本原理を理解しておくことが重要です。